「実家の畑が何年も空いている」「借りられる畑を探していたら耕作放棄地という言葉に行き当たった」。入口はさまざまですが、調べ始めると最初につまずくのが用語です。耕作放棄地・遊休農地・荒廃農地はどれも「使われていない農地」を指すのに、定義も、数え方も、面積も違います。
この記事では、耕作放棄地の意味と読み方を先に片づけたうえで、農林水産省の統計で問題の実像を確認し、解決策・補助金・ビジネス活用までを順に見ていきます。数値はすべて一次情報から、基準日つきで引いています。
耕作放棄地とは簡単にいうと「作るのをやめて、戻す気もない農地」
耕作放棄地とは、農林水産省の農林業センサスで使われている統計用語で、「以前耕作していた土地で、過去1年以上作付けせず、この数年の間に再び作付けする意思のない土地」と定義されています。ポイントは2つ、「1年以上作っていない」ことと、「再開する意思がない」ことです。
つまり、休耕田のように「今年は休ませているが来年は作る」土地は、耕作放棄地には含まれません。逆に、草刈りだけは続けていて見た目はきれいでも、所有者に再開の意思がなければ耕作放棄地です。見た目ではなく、所有者の意思で決まる区分だということです。
この「意思で決まる」という性質が、あとで出てくる遊休農地・荒廃農地との決定的な違いになります。耕作放棄地はセンサスの調査票に農家自身が答えた結果、つまり主観ベースの数字で、5年に1度しか更新されません。
なぜ耕作放棄地は生まれるのか
農林水産省が全市町村を対象に行った「荒廃農地対策に関する実態調査」(令和3年1月・回収率96%)では、所有者側の理由として最も多いのが「高齢化、病気」、次いで「労働力不足」でした。土地側の理由では「山あいや谷地田など、自然条件が悪い」の割合が高く、中山間地域ではとくに顕著です。中山間地域では「鳥獣被害」を挙げる割合も高くなっています。
背景にあるのは担い手の減少です。基幹的農業従事者は2000年の240万人から2025年には102万人へ減り、平均年齢は67.6歳になりました。作り手が減った分をどう埋めるかという話なので、家庭菜園の最短ルートのような小さな入口も、地域から見れば農地の受け手を増やす動きになります。特定の誰かが怠けた結果ではなく、作る人の数が半分以下になったことの帰結として、使われない農地が積み上がっています。
耕作放棄地の読み方は「こうさくほうきち」
耕作放棄地の読み方は「こうさくほうきち」です。最後の「地」は「ち」と濁らずに読みます。関連する用語もあわせて読み方を確認しておくと、自治体の窓口や農業委員会の資料が読みやすくなります。
- 耕作放棄地: こうさくほうきち
- 遊休農地: ゆうきゅうのうち
- 荒廃農地: こうはいのうち
- 農地中間管理機構(農地バンク): のうちちゅうかんかんりきこう
- 農業委員会: のうぎょういいんかい(市町村ごとに置かれる行政委員会。農地の窓口)
- 農振農用地区域: のうしんのうようちくいき(いわゆる青地。転用が原則できない区域)
遊休農地と耕作放棄地の違い、荒廃農地との違い
3つの言葉は「似た意味の言い換え」ではありません。誰が、何を基準に、どのくらいの頻度で数えているかがそれぞれ違います。ここを分けて理解しておくと、ネット上で見かける「耕作放棄地は◯◯万ha」という数字の食い違いが説明できるようになります。
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| 用語 | 性格 | 定義 | 誰が調べるか | 最新の面積 |
|---|---|---|---|---|
| 耕作放棄地 | 統計用語 | 以前耕作していた土地で、過去1年以上作付けせず、この数年の間に再び作付けする意思のない土地 | 農林業センサスの調査票に農家等が回答(主観ベース・5年ごと) | 42.3万ha(2015年) |
| 遊休農地 | 法律用語(農地法第32条) | 1号: 現に耕作の目的に供されておらず、引き続き供されないと見込まれる農地/2号: 農業上の利用の程度が周辺の農地に比べ著しく劣る農地 | 農業委員会の利用状況調査(毎年) | 10.5万ha(令和7年3月31日現在) |
| 荒廃農地 | 調査上の区分 | 現に耕作に供されておらず、耕作の放棄により荒廃し、通常の農作業では作物の栽培が客観的に不可能となっている農地 | 市町村・農業委員会の現地調査(客観ベース・毎年) | 25.7万ha(令和7年3月31日現在) |
遊休農地は「法律が動く」区分
遊休農地は農地法に定義があり、認定されると行政の手続きが動き出します。農業委員会は年1回の利用状況調査で遊休農地を把握し、所有者に利用意向調査を行います。貸す意思も自分で耕す意思も示さないまま放置された場合、農地中間管理機構(農地バンク)と協議すべき旨の勧告が出されます。
耕作放棄地には、こうした法的な効果がありません。あくまで統計上のラベルです。「耕作放棄地だから行政指導が来る」のではなく、「遊休農地と認定されたから手続きが進む」というのが正確な理解になります。
荒廃農地はさらにA分類とB分類に分かれる
荒廃農地は、再生できるかどうかで2つに分かれます。抜根・整地・区画整理・客土などで再生すれば通常の農作業による耕作が可能になると見込まれるものが「再生利用が可能な荒廃農地(A分類)」で、これは農地法第32条第1項第1号の遊休農地と同じものを指します。
一方、森林の様相を呈しているなど農地に復元するための物理的な条件整備が著しく困難なもの、または復元しても継続して利用できないと見込まれるものが「再生利用が困難と見込まれる荒廃農地(B分類)」です。令和7年3月31日現在で、A分類が9.8万ha、B分類が15.9万haとなっています。
借りたい・活用したいという視点で見ると、現実的に手が届くのはA分類の9.8万haのほうです。B分類は、農地としての復元より、非農地判断や森林としての管理が検討される領域になります。
耕作放棄地問題: 何がどう困るのかを数字で見る
「耕作放棄地問題」と一言でまとめられがちですが、実際には規模の問題・周囲への影響・食料供給への影響という、性質の違う3つが重なっています。
規模: 農地は昭和36年から約185万ha減った
日本の農地面積は昭和36年の608.6万haをピークに減り続け、令和7年7月15日現在で423.9万haになりました。約185万haの減少です。減った理由は工場用地・道路・宅地への転用と、農地の荒廃の2つで、後者が今も毎年積み上がっています。
荒廃農地は令和7年3月31日現在で25.7万ha。今の耕地面積423.9万haの6%にあたる広さが、耕せない状態で残っている計算になります。
止まっていない: 毎年2万ha台が新たに発生している
問題の本質は総量よりも収支にあります。令和6年度に新たに発生した荒廃農地は2.4万ha、新たに再生利用されたのは0.8万ha。発生が再生の3倍あり、総面積は横ばいのまま、内訳が「再生可能」から「再生困難」へ移っていく構図です。
- 令和6年度: 新たに発生 2.4万ha / 新たに再生利用 0.8万ha / A分類 9.8万ha / B分類 15.9万ha / 計 25.7万ha
- 令和5年度: 新たに発生 2.5万ha / 新たに再生利用 1.0万ha / A分類 9.4万ha / B分類 16.3万ha / 計 25.7万ha
周囲への影響と、市町村の見通し
荒廃農地は、それ自体が使えないだけでなく周辺の農地に悪影響を及ぼし、解消には多額の費用がかかると農林水産省は整理しています。雑草や病害虫の発生源になり、鳥獣の隠れ場所になることで、まだ耕作されている隣の畑の負担が増えるためです。
先の実態調査では、「5年後の荒廃農地はどうなっていると思うか」という問いに対し、73%の市町村が「増加している」と答えました。現場の見通しは、いまのところ楽観的ではありません。
食料供給: 国は2030年に412万haを目標に置いた
令和7年4月11日に閣議決定された食料・農業・農村基本計画では、農地面積の目標が2030年に412万ha(2024年は427万ha)とされました。さらにKPIとして、農用地区域内の農地面積を令和17年(2035年)に390万haで確保することが掲げられています。
この390万haという目標値には、荒廃農地の発生防止(+0.4万ha)と解消(+6.5万ha)の効果が織り込まれています。裏を返せば、荒廃農地対策が進まなければ目標は届かない、という前提で組まれた数字です。
耕作放棄地と農林水産省の統計: 数字が食い違う理由
検索すると「耕作放棄地は42.3万ha」と「荒廃農地は25.7万ha」という2つの数字が並んで出てきます。どちらも農林水産省の数字ですが、減ったわけではありません。数えている対象と方法が違うだけです。
42.3万haは2015年(平成27年)の農林業センサスによる耕作放棄地面積で、農家の自己申告にもとづく主観ベースの数字です。25.7万haは市町村・農業委員会が現地を見て判定した荒廃農地の面積で、令和7年3月31日現在の客観ベースの数字です。自己申告のほうが広く出るのは自然なことで、両者を引き算しても意味がありません。
自分の地域の数字を調べる順番
全国の数字は方向性を掴むためのもので、実際に動くときに必要なのは市町村単位の情報です。調べる順番はおおむね決まっています。
- 1. 市町村の農業委員会に、利用状況調査の結果と貸し出し希望のある農地があるかを聞く
- 2. 都道府県の農地中間管理機構(農地バンク)で、借受け希望者としての登録方法を確認する
- 3. 農振農用地区域(青地)かどうかを市町村の農業振興地域整備計画で確認する(転用の可否がここで決まる)
- 4. 対象の土地が荒廃農地のA分類かB分類かを農業委員会に確認する(再生費用の見積もりが変わる)
再生可能な農地はどこに多いか
再生利用が可能な荒廃農地9.8万ha(令和6年度)を地域類型別に見ると、中間農業地域が4.3万ha(44%)、中山間地域合計で5.5万ha(56%)を占めます。再生の余地が大きいのは平場ではなく中山間地域である、ということです。
一方、実際に再生された荒廃農地は「市街地や集落周辺」「ほ場整備済みの農地」に多く、山間地域の市町村では「再生された荒廃農地がない」という回答の割合が高くなっています。条件のよい土地から順に戻っている、というのが現在地です。
耕作放棄地の解決策: 誰が何をするかで打ち手が変わる
解決策は「農地を持っている側」「借りて使いたい側」「地域として取り組む側」で内容がまったく違います。自分がどれなのかを決めてから読むと、必要なところだけ拾えます。
農地を持っている人: 貸す・預ける・粗放的に維持する
自分で耕せない農地を抱えている場合、選択肢は大きく3つです。第一に、農地中間管理機構(農地バンク)へ貸し付ける方法。平成26年度に47都道府県すべてに設置された仕組みで、機構が借り受け、必要に応じて基盤整備を行い、まとまった形で担い手へ転貸します。
第二に、地域の担い手や新規就農者へ直接貸す方法。農地の貸し借りは農地法第3条の許可か、地域計画にもとづく手続きが必要になるので、農業委員会が窓口です。第三に、従来どおりの営農が難しい農地で、放牧や蜜源作物の作付けといった粗放的な利用に切り替えて維持する方法があります。
なお、放置し続けた場合のコストも知っておく必要があります。農業委員会から農地中間管理機構と協議すべき旨の勧告を受けた農業振興地域内の遊休農地は、固定資産税の評価で通常適用される限界収益率0.55が乗じられなくなり、結果として課税が約1.8倍になります(平成29年度から)。勧告は、貸す意思も耕す意思も示さないまま放置している場合に限って行われます。
借りて使いたい人: 2023年に入口が広がった
農地を取得・賃借する際の下限面積要件(都府県50a、北海道2ha)は、令和5年(2023年)4月1日に廃止されました。面積の大小にかかわらず権利取得が可能になったという意味で、小さく始めたい人にとっては大きな変更です。
ただし、他の許可要件は残っています。取得する農地のすべてを効率的に利用すること、農作業に常時従事すること、周辺の農地利用に支障を生じさせないこと。この3つは引き続き審査されます。「面積制限がなくなった=誰でも自由に買える」ではない点に注意してください。
いきなり農地を借りるハードルが高いなら、市民農園やシェア畑から入る道もあります。地域ごとの料金・区画・申込先は畑・市民農園を探すで整理しています。制度の全体像は畑の借り方4ルート、費用感は畑を借りる費用の相場、買うか借りるかの判断は農地は買う?借りる?にまとめました。
地域として取り組む: 話し合いで農地を区分する
国が現在の柱に据えているのは、地域ぐるみの話し合いによって「営農を続けて守るべき農地」「粗放的利用を行う農地」などを区分し、土地利用構想として文書化する進め方です。全部を同じように守ろうとして共倒れになるのを避け、優先順位をつけるための枠組みだと考えるとわかりやすくなります。
あわせて、基盤整備によって農地を大区画化・集約化する取り組みも進んでいます。水田整備率が高い市町村ほど荒廃農地率が低い傾向があり、担い手が引き受けやすい形に整えること自体が発生防止になっています。担い手への農地集積率は令和6年度で61.5%、2030年度に7割という目標が置かれています。
- 基盤整備: ほ場整備事業などで大区画化・排水改良を行い、担い手が引き受けられる農地にする
- 地域・集落の共同活動: 多面的機能支払交付金・中山間地域等直接支払交付金を使った草刈りや水路管理
- 鳥獣害対策: 電柵の整備、荒廃農地を緩衝帯として再生し被害を減らす
- 粗放的利用: 放牧や蜜源作物の作付けで、営農を続けずに農地を維持する
- 新規就農者・企業の受け入れ: 再生した農地をまとまった形で提供し、参入を促す
耕作放棄地の補助金: 国の枠組みと申請の入口
耕作放棄地の再生に使える補助金は、多くが国の交付金を都道府県・市町村・地域協議会が受けて実施する形になっています。個人が国へ直接申請するものではない、というのが最初に押さえるところです。
現在の中心は、農山漁村振興交付金のうち「最適土地利用総合対策」です。令和8年度予算概算決定額は7,045百万円の内数で、地域ぐるみの話し合いによる土地利用構想の策定から、粗放的な土地利用の導入、荒廃農地の再生、基盤整備までを一体で支援します。
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| 事業 | 内容 | 期間・交付率 |
|---|---|---|
| 最適土地利用総合事業 | 地域ぐるみの話し合いで農地を区分し、土地利用構想を作成。農用地保全の活動、粗放的利用、基盤整備・施設整備を支援 | 上限5年。ソフトは定額(上限5,000万円、年標準額1,000万円)、ハードは5.5/10等(上限1億円、年標準額2,000万円) |
| 荒廃農地再生支援事業(新規) | 耕作の再開を目指す荒廃農地の再生作業、支障物撤去、簡易な基盤整備、土壌改良を支援(農業振興地域内) | 上限1年。交付率1/2(総事業費200万円未満) |
| 最適土地利用推進サポート事業 | 申請手続きの簡素化、取組内容や農地保全状況の確認、優良事例の横展開を支援 | 上限1年。定額 |
粗放的利用への支援は面積あたりで出る
最適土地利用総合事業のうち粗放的利用支援は、1万円/10a または5千円/10aという面積あたりの単価で、事業期間中最大3年間支援されます。農用地保全等推進員を置く場合は年250万円が措置されます。「作物を作って稼ぐ」以外の形で農地を維持する取り組みに、金額の裏付けが用意されているということです。
再生以外にも使える制度がある
荒廃農地は、発生させないことのほうが解消より安く済みます。そのため、日常の管理を支える制度も対策の一部として位置づけられています。
- 多面的機能支払交付金: 地域の共同活動(草刈り・水路や農道の管理)を支援
- 中山間地域等直接支払交付金: 条件不利地での営農継続を支援
- 鳥獣被害防止総合対策交付金: 電柵の整備など、鳥獣被害による離農を防ぐ
- 農地中間管理機構関連農地整備事業: 機構が借り入れた農地の基盤整備
- 就農準備資金・経営開始資金: 新規就農者の参入を支える(再生農地の受け手づくり)
耕作放棄地ビジネス: 何が成り立ち、何がハードルになるか
「耕作放棄地ビジネス」で語られる活用法はいくつもありますが、成否を分けるのはアイデアより農地法上の位置づけです。農地は、農地のまま使うのか、転用するのかで手続きがまったく違い、農振農用地区域(青地)なら転用は原則できません。土地を押さえる前に、この2点を確認するのが実務の順番になります。
市民農園・体験農園: 農地のまま人に貸す
市民農園は全国で4,273農園、188,713区画、面積1,284haが開設されています(令和6年度)。開設主体の内訳は地方公共団体1,977、農業者1,433、企業・NPO等449、農業協同組合414で、農業者と民間の比率が上がってきています。
農地を農地のまま貸せるため転用が不要で、耕作放棄地の再生と相性がよい形です。開設には特定農地貸付法や市民農園整備促進法にもとづく手続きが必要で、窓口は市町村になります。実際にどんな農園が開設されているかは畑・市民農園を探すで地域ごとに確認できます。都市近郊で区画需要がある立地なら、収益より先に「農地が維持される」という効果が出やすい選択肢です。
営農型太陽光発電: 遊休農地の再生なら期間が長くなる
営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)は、農地に簡易な構造で容易に撤去できる支柱を立て、上部空間に発電設備を置いて営農を継続しながら発電する取り組みです。支柱部分の農地について一時転用許可が必要で、許可期間は原則3年以内ですが、担い手が自ら権利を持つ農地を使う場合、遊休農地を再生利用する場合、第2種農地・第3種農地を使う場合は10年以内になります。
つまり、遊休農地の再生を伴う計画は制度上優遇されています。ただし条件は厳しく、下部の農地で栽培する農作物の単収が、同じ年産の市町村平均と比べておおむね2割以上減少しないことが求められます。令和6年4月1日施行のガイドラインで、営農が適切に継続されない事例を排除する方向に運用が整理されました。「発電が主で農業は形だけ」という計画は通らないと考えてください。
企業参入・農業法人: 農地バンク経由でまとめて借りる
農外企業が農地所有適格法人を設立し、農地バンクからまとまった農地を借り受けて再生する形も出てきています。農林水産省が挙げる事例では、建設業の企業が令和元年に法人を設立し、農地バンクから約2haを借り受け、農地耕作条件改善事業を使って遊休農地6haを含む8.4haを集積、地域特産の果樹を植え付けています(宮崎県日向市)。
分散した農地を1枚ずつ交渉して集めるのは現実的でないため、この規模を狙うなら農地バンクと市町村・JAの連携が前提になります。地域への説明も含めて、行政側の枠組みに乗るかどうかが分かれ目です。
粗放的利用: 稼ぐより「維持コストを下げる」
放牧、蜜源作物の作付け、長大法面の芝生化といった粗放的利用は、収益事業というより維持管理の省力化です。国の支援単価も1万円/10a程度で、これ単独で事業になる金額ではありません。ただ、草刈りの負担で離農するのを防ぐという意味では、発生防止の実効性が高い打ち手です。
現実の再生後の使われ方を見ても、過去3年間に再生された荒廃農地(A分類)の利用方法は「所有者自らによる保全管理」が39%と最多で、「農地中間管理機構を介した利用権の設定」は10%程度にとどまります。派手な事業化より、まず維持できる状態に戻すことが大半だということです。
まとめ: 全国の数字より、自分の一区画から
耕作放棄地の統計は、42.3万ha(2015年、自己申告ベース)で止まり、いま動いている数字は荒廃農地25.7万ha・遊休農地10.5万ha(令和7年3月31日現在)です。毎年2万ha台が新たに発生し、再生は1万ha弱。制度と予算は用意されている一方で、再生の主役はいまも「所有者自身の保全管理」です。
この構図を個人の側から見ると、実はやることはシンプルになります。持っている側なら、放置したままにせず農業委員会に相談して貸す・預ける・粗放的に維持するのどれかを選ぶこと。使いたい側なら、いきなり広い農地を狙わず、市民農園や小さな区画から実際に育ててみて、続けられる面積を知ることです。
作れる面積は、意欲ではなく置き場所・日当たり・使える時間で決まります。まずは環境診断で自分の条件に合う品目と作業量を確認し、実際に借りられる区画は畑・市民農園を探すから地域ごとに見てみてください。ほかのテーマは読みもの一覧にまとまっています。品目ごとの栽培時期は野菜図鑑、育てたものを売る側の話は農産物の売り方比較と小さく稼ぐ入門、直売所や小規模流通の実際は小流通入門にまとめています。